~今年度を振り返って~ (院生室より)

2012/03/29

修士1年の佐藤未来子です。

今年度も残すところあと数日となりました。今年度は、残念ながらあまり頻繁にブログを更新することが出来ませんでしたが、来年度は新しく3人の院生さんも加わる予定ですので、乞うご期待です。

さて、今回は過去の記事で紹介したイベントの“その後”について、3つピックアップして報告したいと思います。

まず8月に取り上げた「南三陸町の訪問」についてのその後です。当時は、まだあまりスタンダードではなかった”一日限りのボランティア”について色々と葛藤しておりました。あれから半年以上が過ぎましたが、先日調べたところ、現在では1日だけのボランティアはかなりスタンダードになっているようでした(ボランティアプラットホーム)。当時は葛藤を抱えながらのボランティアとなってしまいましたが、次回また行くときは、「1日限りのボランティア」に精一杯のパワーを込めて、「サイエンス・カフェ」を提供しに行きたいなと、今は思っています。

9月に取り上げた「ジャーナル・クラブがスタート!」についてのその後です。あれから今年度のジャーナル・クラブは9月~3月で全11回が終了しました。院生としては、毎回発表したりディスカッションの時間には積極的に発言をしたりしたいと思いつつ、他の課題に手一杯でなかなか思うようなペースで論文を読むことができなかったり、皆さんのディスカッションが非常に高レベルで勉強になるのでついつい聞き入ってしまうことの方が多かったというのが正直なところでした。来年度は公共政策のメンバーは3人増える予定で、おそらくジャーナル・クラブでの議論もより活発になると思います。そういった貴重な場を最大限活用するためにも、今後はもっと時間を上手に使って論文を読み、ディスカッションでも積極的に議論できるようにして、将来につながるかもしれない自分の引き出しを、どんどん増やしていきたいと思っております。

11月に取り上げた「初の学会発表!」についてのその後です。あれから今年度の学会発表は、12月のSTS学会では口述発表(15分)、分子生物学会ではポスター発表(1時間)、全部で3つの発表を経験させて頂きました。12月の分子生物学会のポスター発表では、11月の学会で皆様から頂いたご示唆をもとに新たな角度から分析し直し、そこから得られた結果をまとめて発表させて頂きました。発表の回を重ねるたびに、研究者の方とのディスカッションがどんどん楽しくなっていったのを覚えています。入学された院生さんには、ぜひ年に1回と言わず、積極的に学会発表に挑戦してほしいと個人的には思います。

振り返ってみると、本当にたった1年間の間に起きた出来事なのかと思うほど、色々なことを経験させて頂きました。もちろん、ブログには描き切れていないけれど印象にのこっている出来事も沢山あります。
まだまだ修士号の取得までには大きな山場が残っておりますが、まずはこの1年間、こんなにも充実した研究室生活を送れたことを嬉しく思います。今後とも、研究室の皆様から頂いたご助言等をしっかりと心に留めながら、より一層研究に励んでまいります。

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第10回 ジャーナルクラブ記録

2012/03/16

第10回(2012年03月16日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

武藤:
Qualitative thematic analysis of consent forms used in cancer genome sequencing
Clarissa Allen and William D Foulkes
BMC Medical Ethics 2011,12:14

神里:
「日本人とヨーロッパの動物観」
中村禎里
『日本人の動物観―変身譚の歴史―』(1984)

洪:
「生命倫理および安全に関する法律」全部改正
2012.2.1全部改正、2013.2.2施行

張:
“Parents”attitude toward screening for late-onset diseases-A study of Fabry disease
Tsai-Tzu Lin
台湾大学分子医学研究所修士論文(2008)

丸:
ヨーロッパの緊縮財政が製薬企業を圧迫している
Austerity in Europe Puts Pressure on Drug Companies
Stephanie Novak
『The New York Times』2012.2.23

楠瀬:
Hard Choices for Loving People―CPR, Artificial Feeding, Comfort Care, and the Patient with a Life-Threatening Illness―
Hank Dann
A&A Publisher.2009.pp.17-28

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信濃毎日新聞コラム(16)「血液型 隠したいわけは」(武藤)

2012/02/27

◎サイエンスの小径(信濃毎日新聞2012年2月27日掲載)
▽血液型 隠したいわけは▽武藤香織


数年前、看護専門学校で講義をした時のことだ。アイデンティティー(自己の存在理由)と差別について考えるため、「自分の身分や性質を表す情報のなかで、人に知られたくない情報は何か」というテーマでグループ別に議論してもらったところ、複数のグループから「血液型を隠したい」という意見が出て、驚いた。B型の学生から、「彼氏には言っていない」「合コンではA型のふりをする」などという声も出てきた。

最近、東大の学生に聞いた時にも、「理不尽なB型差別に傷ついてきた」という学生がいた。「何をやっても『やっぱりB型だからだめなんだ』と言われるのに、A型の人は『さすがA型だね』と言われる」のだそうだ。どうも若い人たちの間で、B型の立ち位置は厳しいと認識されているらしい。
若者世代が中心に回答したいくつかの世論調査(いずれも2008年)を見ると、血液型による性格占いを「信じている」と回答した人は37%程度。B型の人は特に、血液型と性格に関係があると信じ、性格診断に関心があるとの結果もあった。また、異性と交際する際にも、趣味、職業、生年月日(年齢)に次いで血液型が重視されているのだという。

そもそも血液型とは、血液中の細胞が持っている、免疫反応を引き起こさせる物質(抗原)の違いをもとにした分類で、分類の仕方もいくつかある。その一つであるABO式血液型は、赤血球の表面にある抗原の種類によってに分類したものだ。だから、輸血の際には、抗原抗体反応(拒絶反応)を引き起こさないように、血液型を確認しておく必要がある。しかし、血液型と性格との関連に、何ら科学的な根拠はない。

そして、ABO式血液型の遺伝子は第9染色体にあり、血液型は遺伝情報でもある。就職活動で学生が提出する書類に血液型を記入させる企業も実在するが、血液型に基づいて採用の判断などが行われているとなれば、遺伝情報に基づく差別の可能性も疑われ、深刻な社会問題につながりうるところだ。
血液型による性格診断は、出版物をはじめさまざまなメディアで取り上げられ、現代日本社会の一つのコミュニケーションツールにもなっている。それだけに、偏見や差別につながらないかたちで扱われることを願いたい。

(東大医科学研究所准教授)(了)

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第9回 ジャーナルクラブ記録

2012/02/17

第9回(2012年02月17日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

井上:
鳥インフルエンザの感染研究の一時中断
Flu transmission work is urgent
Nature,481,443(Correspondence)
Pause on Avian Flu Transmission Research
Science,335,400(Letters)

神里:
Don't censor life-saving science
Peter Palese
Nature Vol.481 p115 2012.1.12
「Fink Reportをどう読むか~規制側から科学コミュニティへの提言~」
森本正崇
慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所(G-SEC)バイオセキュリティワークショップ「科学の倫理と機微技術のリスク管理」開催報告書

洪:
「遺伝性疾患の出生前診断と保因者診断に対する大学生の意識」
関澤浩一、朝野聡、岸邦和
『思春期学』第19巻第2号、201-209、2001

張:
「子育てママ層」の科学技術に関する市民参加意識
八木絵香、平川秀幸
『科学技術コミュニケーション』第4号、2008.pp.56-68

楠瀬:
再生医療研究の見通し課題~生理学者・岡野栄之先生をお招きして~
聞き手:橳島次郎
東京財団「生命倫理サロン」第9回、2012.2.9

佐藤:
「一般市民の科学的リテラシーに関する分析と考察」
岡本信司
『研究 技術 計画』Vol.22,No.3/4,2007

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第8回 ジャーナルクラブ記録

2012/02/03

第8回(2012年02月03日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

武藤:
Public attitudes to the promotion of genomic crop studies in Japan: correlations between genomic literacy, trust, and favourable attitude
Izumi Ishiyama, Tetsuro Tanzawa, Maiko Watanabe, Tadahiko Maeda, Kaori Muto, Akiko Tamakoshi, Akiko Nagai and Zentaro Yamagata
Public Understanding of Science DOI: 10.1177/0963662511420909. 2011

神里:
Public Attitude Toward Xenotransplantation: Opinion Survey
A.R.Rios, C.C.Conesa, P. Ramírez, M.M.Rodríguez, P.Parrilla
Transplantation Proceedings Volume 36, Issue 10, Pages 2901-2905,December 2004
Attitudes Toward Islet Cell and Tissue Xenotransplantation Among Kidney and Liver Patients on the Transplant Waiting List
Martínez-Alarcón L, Ríos A, Pons JA, González MJ, Ramis G, Ramírez P, Parrilla P
Transplant Proceedings.2010 Oct; 42(8): 3098-3101

洪:
研究動向:「家庭内ケア労働者の国際移動」
上野加代子
『家族社会学研究』第21巻第2号、2009.10、pp.195-200

張:
日米における難病療養者支援の概況 米国におけるALS患者の療養支援と看護
中山優季、Pamela.A.Cazzolli,R.N
『日本難病看護学会』第13巻 第2号, 112-118,2008

楠瀬:
幹細胞関連ニュース
損傷した顔を治療する「バイオマスク」
発毛サイクルの「休止期」を維持する因子を発見
安易に幹細胞治療を受けないように
ヒト幹細胞のデータペースを構築―厚労省、来年度から
「法律違反はない」幹細胞培養企業が「回答書」
「3倍体胚」万能細胞認めず=法律・指針の対象外―文科省
幹細胞治療薬、1号に続き2・3号も韓国製
脳の「老化」と「若返り」を調節する因子
幹細胞の住環境の詳細な解析
同種幹細胞の薬剤を世界で初めて認可、韓国
再生医療:長崎大学病院の臨床研究、手続き不備で中止
長崎大、計画書なく再生医療研究 国の指針に抵触
など

佐藤:
非専門家の問いの特徴は何か?それは専門家の眼にどう映るか?
齋藤芳子、戸田山和久
科学技術コミュニケーション第10号(2011)

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第7回 ジャーナルクラブ記録

2012/01/20

第7回(2012年01月20日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

武藤:
Estimating the Danish Populations' Preferences for Pharmacogenetic Testing Using a Discrete Choice Experiment.The Case of Treating Depression
Louise Herbild, Mickael Bech, Dorte Gyrd-Hansen
Value In Health,Vol 12,No 4: 560-567,2009

神里:
The Ethics Police?:IRBs' Views Concerning Their Power
Robert Klitzman
PloS ONE Volume 6,Issue 12,December 2011

洪:
「生命観の国際比較からみた臓器移植・脳死に関するわが国の課題の検討」
峯村芳樹、山岡和枝、吉野諒三
『保健医療科学』2010,Vol.59,No.3,p.304-312

張:
「NICUにおいて親と子がどのように関係性を築いていくのか ―18トリソミー児の親の語りから―」
櫻井浩子
『生存学研究センター報告』立命館大学生存学研究センター, 139-154, 2008

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信濃毎日新聞コラム(15)「キメラ胚の研究を考える」(武藤)

2012/01/16

◎サイエンスの小径(信濃毎日新聞2012年1月16日掲載)
▽キメラ胚の研究を考える▽武藤香織


ある個体に、別の個体の細胞がまざった状態にある個体を、キメラと呼ぶ。これは、ギリシャ神話に登場する、ライオンの頭とヤギの胴体と蛇の尻尾を持つ怪獣「キマイラ」が語源となっている。動物実験ではすでに、羊とヤギ、ニワトリとウズラなどの異種間キメラがつくられている。しかし、動物と人のキメラは存在しない。

2001(平成13)年に国が策定した「特定胚の取扱いに関する指針」では、動物の体内で人の移植用臓器をつくることを目指した基礎研究に限り、人の細胞を含む動物胚、つまりキメラ胚をつくることが認められた。発生過程で動物と人の細胞がどのようにまざり、どのような機能を果たすかを検討するためだ。

そして今、移植用臓器の慢性的な不足を解消するための研究の一つとして、一部に人の要素を持つ動物胚をつくる研究が注目されている。具体的には、豚の体内で人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から膵臓をつくり、糖尿病などの患者に移植することを目指した再生医療の基礎研究だ。

指針では、キメラ胚は作成後14日以内に廃棄することが求められ、動物や人の体内に移植することは禁じられている。豚と人の細胞が混在する生き物が誕生してはならないと考えられているからだ。だが、人のiPS細胞が、本当に身体のあらゆる細胞に変わりうる細胞なのかどうかを調べるには、キメラ胚を培養し続け、「人の臓器らしくみえるもの」をもった動物の誕生まで見届ける必要がある。

果たして、「人の臓器らしく見えるもの」を有した状態で生まれた動物は、家畜と同様の地位を獲得するのだろうか。それとも、「人っぽさを持つ動物」という新たな存在として迎えるべきなのだろうか。

また、「人の臓器らしく見えるもの」は、実際に人の身体に移植して、臓器として機能するかどうかを確認しなければならない。もし人の臓器として機能したら、動物の体内で作成された臓器は、脳死体から摘出される臓器と同様に扱われるべきなのだろうか。

SFのように思えることが、まだ基礎研究の段階ながらも、現実味を帯びてきている。私たちの社会には、動物に人の臓器をつくってもらうことを受け入れる覚悟が本当にあるのだろうか。今から考え始めても遅くはない。

(東大医科学研究所准教授)(了)

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 ~相馬高校の皆さんとの交流~(院生室より)

2011/12/27

修士一年の佐藤未来子です。

12月18日、相馬高校二年生の皆さん(12名+付添の先生1名)が医科学研究所を見学に来て下さいました。見学は、まずバイオバンクの見学、その後に当研究室の武藤先生の講義(オーダーメイド医療の倫理的問題を中心に)、質疑応答という流れでした。私は、その中の武藤先生の講義の部分のサポート役として、お手伝いさせて頂きました。

見学に来て下さった皆さんは生物選択の生徒さんと言うことで、おそらく生徒さんの多くは理系(医療系)進学を考えており、科学技術そのものに対する憧れが強いメンバーだったのではないかと思います。したがって、もしかしたら口には出さないものの、こういった倫理的問題点について興味がわかなかった生徒さんもいたかもしれません。

しかし私としては、沢山の研究者が関わる研究プロジェクトには、常に多くの科学技術の倫理的課題(また法的社会的課題)が発生しており、それについて考えることの難しさを当研究室での研究生活を通して身をもって実感しておりましたので、こうした問題点について理系進学志望の生徒さんたちに今知っていただくことの意味は大きいのではないか、と思いながらお手伝いしておりました。

講義の中では「研究成果を社会に報告することにはどんな良いことがあるか?」などの問いかけも行われました。生徒さんたちは自信なさ気ではありますが「(研究にまだ参加していない方々に)研究を理解してもらって協力してもらえる」、「(研究に参加した方々に)安心してもらえる」などと、自分たちなりの答えを一生懸命考えて、提示してくれました。また質疑応答の時間には、「(研究のための)血液を提供してくれる人に何かをあげたりしないのか?何かをあげれば提供する人も増えるのではないか?」といった意見を自分から出してくれる生徒さんもいました。講義終了後には、「自分は医学に興味があるが、こうした問題を考える活動にも積極的に関わっていきたい」と言いに来てくれるほど非常に関心を持ってくれた生徒さんもいました。

後日相馬高校の先生から頂いたメールによると、学生さんの中には、「内容はわかるのだけれど扱っている内容が難しく(はっきりした答えのない問題なので)、なかなか質問できなかった」とか、「何となくもやもやと考えていることはあるけれども、はっきりと口に出して表現できなかった」といった感想を抱く学生さんもいたようです。もちろん、1度きりの講義ですぐに理解したり判断したりできるような簡単な問題ではないからこそ、このような活動の必要性が提起されているのだということは言うまでもありません。

寒い中、相馬からはるばる見学に来て下さった相馬高校の皆さん、(大変遅くなってしまいましたが)本当にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

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第6回 ジャーナルクラブ記録

2011/12/16

第6回(2011年12月16日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

武藤:
Power to the People: Participant ownership of Clinical Trial Data
Sharon F. Terry and Patrick F. Terry Science Translational Medicine, 9 February 2011 3 (69): 1-4

井上:
「世界医師会への加入」
日本医師会雑誌第26巻1号(昭和26年7月1日)
「西ドイツ医師会および日本医師会の入会について」
世界医師会事務総長 1951年5月22日

神里:
Ethical Standards for Human-to-Animal Chimera Experiments in Stem Cell Research
I.Hyun, P.Taylor, G.Testa, B.Dickens, K.Jung, A.McNab, J.Robertson, L.Skene, and L.Zoloth, Cell Stem Cell 1, No.2(2007): 159-163

洪:
「被験者を対象とした治験および薬剤師治験コーディネーターの業務に対するアンケート調査」
岡澤香津子、高野三男
『日本農村医学会雑誌』56巻1号.pp.22-28, 2007
「九州大学病院における臨床試験とCRC業務に関する医師を対象としたアンケート調査」
辻敏和,金谷朗子,山崎雅代,西田朋子,奥村修子,若杉陽子,菊武恵子,堤優子,稲田実枝子,山田精一,小城如花,濵田香奈江,伊藤善規,吉川学,中西洋一,大石了三
『医療薬学』Vol.32,No.2.pp.164-173,2006

張:
隈本邦彦:「動き出した特定看護師制度 単なる“医師不足対策”ではいけない」
『月刊ナーシング』Vol.30,No.6, 2010.5
渥美京子:「特定看護師の創設は看護職の裁量権拡大への第一歩」
『ナーシングカレッジ』14(6): 46-51, 2010.6
川嶋みどり:「医師不足理由に看護の専門性を軽んじるな」
『毎日新聞』、2011.12.15 東京朝刊

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第5回 ジャーナルクラブ記録

2011/12/02

第5回(2011年12月02日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

武藤:
Aaron Panofsky “Generating sociability to drive science: Patient advocacy organizations and genetics research”
Published online before print November 18, 2010, doi: 10.1177/0306312710385852
『Social Studies of Science』

井上:
Knoppers B.M.,Chadwich R. Human genetic research: emerging trends in ethics.
Nature Review Genetics.6:75-79.2005
Meslin,E.M.,Cho M.K. Research ethics in the era of personalized medicine: updating science's contract with society.
Public Health Genomics.13:378-384.2010.
Gottweis H.,Gaskell G.,Starkbaum J.Connecting the public with biobank research: reciprocity matters.
Nature Review Genetics.12:738-739.2011.
Saha K.,Hurlbut J.B. Treat donors as partners in biobank research.
Nature.478:312-313.2011

神里:
青山善充 「司法修習生の給費性の是非―法曹志望者支援の在り方」
ジュリスト1416号 2011.2.15

洪:
「臨床研究コーディネーター(Clinical Research Coordinator: CRC)」
横山錬蔵、深澤由美、佐藤裕史
『医療と検査機器・試薬』Vol.34.No.3,pp.293-300,宇宙堂八木書店

張:
宮坂道夫:ALS医療についての倫理的検討の試み
『医学哲学倫理』22,59-68,2004

佐藤:
日本における科学技術リテラシーに関する研究の動向―教育分野を中心として―
長崎栄三、阿部好貴、斎藤萌木、勝呂創太
『国立教育政策研究所紀要』第136集:189-205

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信濃毎日新聞コラム(14)「バイオバンク」幅広い議論を(武藤)

2011/11/28

◎サイエンスの小径(信濃毎日新聞2011年11月28日掲載)
▽「バイオバンク」幅広い議論を▽武藤香織


病院で、検査のために採取した血液や尿の残り、あるいは手術で切除した患部などを、廃棄せずに、将来の医学研究のために使わせてほしいと頼まれた経験はないだろうか。近年、こうした研究の営みについて、提供者に詳しく説明することが求められている。たとえば、東京にある国立がん研究センターでは、新たに説明員を置いて患者に依頼したところ、90%以上の患者から同意が得られたという。
だが一方で、提供した生体試料の行方についてはどうだろう。ホームページなどで公表している研究機関もあるが、一般には知られていないのではないだろうか。

患者が提供した試料は、その病院の医師たちが中心になって研究に用いることが多い。専門的な解析をするために、共同研究先の研究機関や企業に試料を送る場合もある。

また、そのほかに、「バイオバンク」と呼ばれる機関に収められることがある。バイオバンクとは、生体試料をさまざまな研究に活用できるように保管し、研究者や企業に提供する機関の総称だ。試料を使いたい人に対して、一定の審査を経て、提供することが多い。

バイオバンクは1990年代から世界各国で構築されはじめ、日本にもある。たとえば、さまざまな病気の細胞から作ったiPS細胞(人工多能性幹細胞)を収集するバンクが設けられた。また、脳に関する病気を解明するために、死後の脳を収集するバンクもある。多様な研究に対応するには、多様な試料を収集することが必要になる。

アメリカでは60年代から、研究のための試料収集に関して、患者団体と研究者が話し合い、協力してルールを決めてきた歴史がある。90年代以降は、患者団体がバイオバンクを運営する取り組みも始まり、患者と研究者の関係は、徐々に対等な関係になってきた。だが、日本ではまだバイオバンクの存在自体があまり知られていない。

今般、国会で成立した第3次補正予算で、新たに「東北メディカル・メガバンク」が構築されることになった。最先端の研究や診療を実施する拠点として、震災被災者から試料やデータも収集するというが、被災地の人たちがその意義を認め、現地の医療態勢の立て直しと充実に寄与するバンクとすることができるかどうかが大きな課題だ。今後、バイオバンクをめぐって、幅広く活発な議論が起こることを願いたい。

(東大医科学研究所准教授)

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~初の学会発表!~(院生室より)

2011/11/13

修士一年の佐藤未来子です。

11月10~12日の3日間、幕張メッセで開催された人類遺伝学会に参加してきました。1日目は、当研究室に入学して初めての学会発表(ポスター)でした。18~19時の1時間、自分の研究に対しての自信と不安の両方を抱え、非常に緊張して手に汗を握りながらポスターの前に立っておりました。

自分の目標でもある研究者等の方々が足を止めてポスターを読んで下さり、そして沢山のご示唆を下さり、緊張したものの、多くの収穫があった1日でした。現在、頂いたご示唆をもとに既に再検討を始めております。

4~5月にかけて研究テーマを考え、7月に演題登録のための要旨を提出し、それから何回も何回も脇道に逸れては軌道修正しを繰り返した末の、なんとか完成したポスターでした。指導教員の先生方には本当に沢山時間を割いていただき、ご迷惑をおかけしてしまいました。本当にありがとうございました。

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第4回 ジャーナルクラブ記録

2011/11/04

第4回(2011年11月4日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

井上:
地震で訴えられた研究者
Hall SS Scientists on trial:At fault? Nature.2011;477:264-269
地震学 防災と隔たり
『朝日新聞』小坪遊、瀬川茂子 2011.10.20

神里:
The academy of medical sciences.Animal containing human material
イギリス医学アカデミー報告書「ヒトの物質を含有する動物」2011.7

張:
土屋葉 障害者自立生活運動と「脱家族」―「愛情」による「囲い込み」を問う
(金井淑子『ファミリー・トラブル―近代家族/ジェンダーのゆくえ』2006明石書店)

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第3回 ジャーナルクラブ記録

2011/10/21

第3回(2011年10月21日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

井上:
The limits of disclosure :what research subjects want to know about investigator financial interests.
Christine Grady,Elizabeth Horstmann,Jeffrey S.Sussman, Sara Chandros Hull.Journal of law,medicine &ethics. 2006;34(3):592-599

神里:
What constitutional protection for freedom of scientific research?
Amedeo Santosuosso,Valentina Sellaroli,Elisabetta Fabio. J Med Ethics 2007;33:342-344
Scientific freedom
Simona Giordano,Marco Cappato J Med Ethics 2007;33:311-312

洪:
遺伝子検査と遺伝子治療に関する争点と社会的受容
Issues of genetic test,gene therapy and national survey
李 仁栄(イ・インヨン)
『翰林法学EORUM』第16巻、2005

張:
東アジアにおけるケアの「家族化政策」と外国人家事労働者
安里和晃
『福祉社会学研究』2009;No.6:10-25

荒内:
遺伝子医療革命 ゲノム医学がわたしたちを変える
The language of life, DNA and the revolution in personalized medicine
フランシス・F・コリンズ著 矢野真千子訳 NHK出版

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2011年11月13日(日)シンポジウム「患者が支えるバイオバンクとその未来」(日英通訳・手話通訳あり)(10/20更新)

2011/10/20

バイオバンクとは、一般の方々や患者の皆さん、ご家族から提供された生体試料を保管する倉庫のことです。日本だけでなく、世界中の様々な研究機関で、DNA、血清、細胞、組織など、様々な生体試料が収集されており、それらは様々な医学研究に生かされてきています。しかし、バイオバンクに関する日本での知名度は、十分とはいえません。

アメリカでは、こうした生体試料の収集に、患者団体と医学研究者が話し合い、協力し合ってきた歴史があり、患者団体自身がバイオバンクを運営する取り組みも始まっています。

そこで、このシンポジウムでは、アメリカの患者団体の方々をお招きし、患者のみなさんが医学研究やバイオバンクについて知り、関わっていく意義やその難しさについてお聞きします。
日本語・英語通訳をご用意し、質問の機会も設けております。このシンポジウムをきっかけに、日本の患者のみなさんにとっても、医学研究やバイオバンクが身近な存在となっていくきっかけになればと願っております。ぜひお気軽にご参加ください。

日程: 2011年(平成23年)11月13日(日)13時30分~16時30分
場所: 東京大学医科学研究所 1号館 講堂(港区白金台4-6-1)
地下鉄南北線・三田線「白金台」駅2番出口より、徒歩5分
入場: 無料
事前申込み: 配布資料準備の関係で、できるだけ事前申し込みをお願いしております。お名前とご連絡先をご記入のうえ、 または、FAX 03-6409-2080 でお申し込みください。
主催: 文部科学省「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」
共催: 厚生労働省「希少性難治性疾患患者に関する医療の向上及び患者支援のあり方に関する研究班」
後援: 立命館大学生存学研究センター/立命館大学グローバルCOE「生存学」創成拠点

タイムテーブル(予定):

13:30 開会あいさつ 武藤香織(東京大学医科学研究所准教授)
13:40 講演 アリス・ウェクスラー氏(米国・遺伝病財団・理事)
14:25 講演 シャロン・テリー氏(米国・ジェネティック・アライアンス代表)
15:05 休憩
15:20 パネルディスカッション
進行:松原洋子氏(立命館大学生存学研究センター教授)
指定発言:増井徹氏(難病研究資源バンク、独立行政法人医薬基盤研究所室長)他
16:30 閉会(予定)

【講演者ご紹介】

アリス・ウェクスラーさん(遺伝病財団理事)
ハンチントン病の母をもつ歴史学者。カリフォルニア大学ロサンジェルス校女性学研究センター研究員。母親の診断後、父や妹とともに、ハンチントン病の原因を見つけるため、研究者探しに奔走し、研究用の寄付金を集めてきた。1979年から20年間にわたり、ベネズエラにあったハンチントン病の大家系を一軒ずつまわり、4000名から血液提供を受けていったことが知られている。これらの血液は、ハンチントン病の遺伝子の発見に大きく貢献し、医学研究に深くかかわるアメリカの患者・家族のモデルとなった。1986年、一家はハンチントン病の研究を応援するため、「遺伝病財団(Hereditary Diseases Foundation)」を創設し、現在も研究者を応援している。代表作に、ハンチントン病のリスクをもった娘としての葛藤を描いた『ウェクスラー家の選択』(新潮社、額賀淑郎・武藤香織共訳)がある。

シャロン・テリーさん(ジェネティック・アライアンス代表)
1994年、2人の子どもが弾力繊維性仮性黄色腫(PXE)と診断され、夫のパトリックとともに、その研究を応援する組織である、「PXE インターナショナル(PXE International)」を創設。倫理的な医学研究の実施とその戦略作りに加え、同じ病気に苦しむ患者・家族と一般社会のための支援や情報提供に尽力した。PXEに関連する遺伝子を発見した科学者と特許を共同管理し、すべての権利は「PXE インターナショナル」に帰属するようにした。また、33の基礎研究プロジェクトにも関与している。夫のパトリックは、先天性疾患や遺伝性疾患の患者・家族の生体試料を研究用・産業応用に活用するため、収集・保管・配布する「ジェネティック・アライアンス・バイオバンク」を他の患者団体と一緒に立ち上げ、運営している。メリーランド州在住。

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信濃毎日新聞コラム(13)難病の説明 当事者自ら(武藤)

2011/10/17

◎サイエンスの小径(信濃毎日新聞2011年10月17日掲載)
▽難病の説明 当事者自ら▽武藤香織


ハンチントン病という病気がある。国指定の難病として、2009年度末現在で796名の患者が登録されており、専門家の間では、予防法や根本的な治療法がない遺伝性神経難病として知られている。この病気の患者・家族の会が生まれて、今年で10年になる。大学院生のときに出会った人たちとの縁で、私も会の設立と運営のお手伝いをしてきた。

この会ができる前は、患者や家族が安心して手に取れる、病気や療養の解説書がなかった。保健所には、平成の世になっても、「愛情があれば結婚してもよいが、子どもをつくらずに病気をなくす努力が必要です」という〝助言〟の書かれた資料が置かれていた。また、「ハンチントン」をインターネットで検索しても、深刻な症状や死の恐怖を煽るような記述が多く、とても当事者の生きる意欲につながるものではなかった。

そこで、患者・家族の会が最初に取り組んだのは、病気や療養に関する解説書づくりだった。イギリスやカナダで1970年代に発足した患者・家族の会の刊行物を参考に、当事者が「こんなふうに説明してほしかった」と思える解説書ができて、友達や交際相手、職場の理解を得たいときに使われているそうだ。会の集まりでは、リラックスした表情の人たちに出会える。

他方、この10年間、当事者の知らないところで、この病気を題材にした推理小説や恋愛小説、4コマ漫画などが生まれた。悪意のない表現ではあっても、病気がエンターテインメントの材料になることに複雑な思いを抱く患者、家族も少なくない。さまざまな表現とのつきあいはまだ続く。

最近、設立10周年の記念集会があり、この病気に関心を寄せる科学者や専門医、訪問診療医が講演して、参加者と意見交換を行った。以前は、専門家が同席することに強い異論が出た時期もあった。だが、解説書づくりを通して、病気の説明の仕方を、専門家任せにせず当事者自ら考えたことが、専門家と一緒に将来を考える機運につながったのかもしれない。そう考えると感慨深かった。

患者数が少なく、実態が把握されていない希少難病は6000~7000種類もあるといわれている。患者のなかには同病の他者を知らない人もたくさんいるようだ。その人たちが安心して誰かとつながり、病気について自分たちにふさわしい表現を広めていけることを願う。

(東大医科学研究所准教授)(了)

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ヒトと動物のキメラ作成研究に関する論文が『生命倫理』に掲載されました(神里)

2011/10/12

「ヒトと動物のキメラを作成する研究はどこまで認められるか?-再議論に向けた検討課題の提示-」が生命倫理学会誌『生命倫理』Vol.21, No.1に掲載されました。
平成22年7月、ヒトiPS細胞を動物の胚盤胞に注入して動物性集合胚を作成する研究に関する届出が文部科学大臣になされ、これを契機に現行の「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」および「特定胚の取扱いに関する指針」に基づく動物性集合胚研究の規制について見直しの必要性が認識され始めています。拙稿では、複雑化しているヒトと動物のキメラに関する概念整理からはじめ、日本における現在の規制とその問題点、および、ヒトと動物のキメラ胚研究の規制のあり方について再議論を行う上での検討課題を考察しております。是非お読みいただければと思います!

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第2回 ジャーナルクラブ記録

2011/10/07

第2回(2011年10月7日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

武藤:
「薬剤経済学」の課題(上)
コーディネーター:中村洋 講師:福田敬 池田俊也
『社会保険旬報』No.2473、2011.10.1 pp12-18

井上:
Biobanking and deceased persons
Anne Marie Tassé. Hum Genet. 2011 Sep;130(3):415-23.

神里:
Biomedical Scientists' Perceptions of Ethical and Social Implications: Is There a Role for Research Ethics Consultation?
Jennifer B. McCormick, Angie M. Boyce, Mildred K. Cho. Soc Sci Med. 2008 Jun;66(12):2520-31.

洪:
パブリック・バイオバンクに関する市民の認識特性の研究
ジョ・ソンキョム、ジョ・ウンヒ、パク・ソンチョル
『生命倫理』(韓国生命倫理学会誌)第11巻 第1号、2010年6月、pp1-14

張:
バイオバンクに関する意識調査~Taiwan Genomic Surveyの事例
中央研究所 人文社会科学研究センター

荒内:
Personal genome sequencing: current approaches and challenges
Michael Snyder, Jiang Du and Mark Gerstein. Genes & Dev. 2010. 24: 423-431

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 ~ジャーナル・クラブがスタート!~(院生室より)

2011/09/16

修士一年の佐藤未来子です。

今日は、記念すべき当研究室の「ジャーナル・クラブ」第1回目が開催されました。これまでも、研究倫理研究会や公共政策セミナーは月1回のペースで、院生読書セミナーは週1回のペースで行われていましたが、9月からは月2回のペースで「ジャーナル・クラブ」が始まることになりました。

発案者は当研究室の神里先生で、基本的なルールは、公共政策研究分野の参加できるメンバーが、自分の興味のある論文(英語でも日本語でも可)と内容をA4用紙1枚文でまとめたレジュメを持ち寄り、1人5分程度で紹介しあうというものです。発表の後は自由に質疑応答・ディスカッションをする時間もあります。

第1回目の本日は、武藤先生、井上先生、神里先生、洪先生、張さんが発表されました。今回私は残念ながら発表できませんでしたが、皆さんのジャーナル発表やディスカッションを聞いて勉強させて頂きました。

今後は、せっかく神里先生がセッティングして下さった良い勉強の機会なので、出来るだけ多く論文を読み、出来るだけ多く発表し(また皆さんの発表後のディスカッションにも積極的に参加し)、発表やディスカッションの腕を磨いていきたいと思います。

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第1回 ジャーナルクラブ記録

2011/09/16

第1回(2011年9月16日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

武藤:
Searching for a way to live to the end: decision-making process in patients considering participation in cancer phase I clinical trials.
Kohara I, Inoue T. Oncology Nursing Forum. Volume 37, Number 2 / March 2010

井上:
Ethics: Investigators' interests: what should trial participants be told?
Romain PL. Nature Reviews Rheumatology 6, 70-71 (February 2010)

神里:
The bioethics of stem cell research and therapy
Insoo Hyun. J Clin Invest. 2010 Jan;120(1):71-5.

洪:
Ethics takes time, but not that long
Mats G Hansson, Ulrik Kihlbom, Torsten Tuvemo, Leif A Olsen and Alina Rodriguez. BMC Medical Ethics 2007, 8:6

張:
「一人っ子政策」下の農村―中国
何燕侠、譚娟『アジア遊学』No.119、2009年2月

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