2019年第8回公共政策セミナー

2020/01/08

本日第8回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:1月8日10時~12時半頃

発表者1: 内山正登(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 客員研究員)
タイトル: 2019年の研究活動の報告と博士論文の概要

要旨:

昨年一年間、これまで行ってきた受精卵を中心としたヒト生殖細胞系列へのゲノム編集に関する啓発プログラムの開発以外に、食品へのゲノム編集の利用に関する意識調査、遺伝分野における適切な用語のあり方に関する研究活動を進めてきた。それぞれ、学会発表と論文投稿というかたちでまとめることができた。そこでこれらの報告をするとともに、現在取り組んでいる博士論文の概要と進捗状況について説明する。

発表者2: 須田 拓実(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻医療イノベーションコース 修士課程)
タイトル: Undocumented Immigrantsの医療へのアクセスに関わる諸課題について

要旨:

発表者が昨年4月以降に主に取り組んできた内容を整理した上で、特に関心を持った上記のテーマについて調べたことと、今後の課題や発表者が調査・検討したいことを報告する。在留資格のない外国人(Undocumented Immigrants)に関して、医療の提供より取締を強化しようとする国々が見られる。例えば米国では、特に現在の政権下での移民政策において、連邦政府が主体となってUndocumentedImmigrantsを拘束し、国外追放する事案が多数ある。この動きに対して一部の州や医療機関では、在留資格を問わず外国人が必要とする医療を提供することで、ある種の「駆け込み寺」として機能するべく取り組まれている。日本では、2000年代の取締強化により、Undocumented Immigrantsの数は減少した。しかし、近年で国策として受け入れ数が急増している技能実習生を初めとして、在留資格を失うリスクを抱えた外国人は存在し、今後の増加も見込まれる。海外での議論を参考にしつつ、日本国内でUndocumentedImmigrantsに対しても医療へのアクセスを担保するために、発表者が今後取り組むべきと考えている課題を述べる。

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学友会セミナー 李 怡然さん(1/20)

2020/01/06

東京大学医科学研究所 学友会セミナーのお知らせ

http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/events/gakuyukai/archive/post_872.php

開催日時: 2020年1月20日(月)18:00~19:00
開催場所: 総合研究棟8階 大セミナー室
講師: 李 怡然
所属・職名: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 公共政策研究分野 特任研究員
演題: 医療・医学研究に関する「告知」の研究―遺伝性腫瘍に関する家族内での情報共有を事例に

概要:

2010年代以降、疾患の早期発見や予防・治療選択のために、医学的にactionable(対処可能)な疾患について、患者や家族が積極的にリスクを知り、家族内で共有することを、推奨する傾向が強まっている。たとえばBRCA1/2は遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の原因遺伝子であり、サーベイランスや乳房・卵巣のリスク低減手術、分子標的薬PAPR阻害剤の選択のためにも、血縁者への情報共有が期待される。さらに、がんゲノム医療が推進され、網羅的なゲノム解析を伴うがん遺伝子パネル検査が臨床実装、保険収載された。つまり、家族歴をもたない一般のがん患者と家族も、二次的所見としてわかる遺伝性腫瘍の情報の取扱いについて、意思決定に直面する事態が生じている。しかし、日本の患者・家族の情報共有の実態や課題点については、十分明らかにされていない。

本研究では、がん患者・家族への質問紙調査を通して、がん遺伝子パネル検査で遺伝性腫瘍の可能性がわかった場合の、情報共有への希望を明らかにした。また、HBOC患者・家族へのインタビュー調査から、家族内でのコミュニケーションの態度や経験を考察した。

本セミナーでは、ほかの医療・医学の「告知」研究にも言及しつつ、遺伝情報に関する「リスク告知」研究の概要を紹介する。また、今後の展望として「知らないでいる権利」や医療者の守秘義務に関する近年の議論の動向、子どもの全ゲノム解析に関する論点について触れたい。

主たる世話人:宮野 悟(DNA情報解析分野)
   世話人:武藤香織(公共政策研究分野)

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2019年第7回公共政策セミナー

2019/12/11

本日第7回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:12月11日10時~12時半頃

発表者1: 楠瀬まゆみ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)
タイトル: 研究におけるベネフィットシェアリングに関する倫理的議論に関する検討

要旨:

研究倫理の文脈においてベネフィット・シェアリング(benefitsharing)の議論がなされ始めたのは比較的新しく、議論が十分になされていない
分野の一つである。従来、研究におけるヒト試料・情報の提供に関しては利他主義に基づいた無償提供が前提とされている。しかし、企業等のなかには、それら無償で得た情報を販売することによって利益を得ている場合もある。Schroeder(2006)は、ベネフィット・シェアリングを、交換の正義を達成するためにヒト遺伝資源提供者にその資源利用に由来する利益や利潤の一部を提供する行為と定義する。さらにAnderson & Schroeder(2013)は、ベネフィット・シェアリングの背後にある哲学的原則として、科学技術の研究や発展に貢献した人々は、その利益を共有するべき(oughtto)であると述べ、科学的進歩の貢献者と利益を共有しない場合の搾取の可能性について指摘している。そこで本発表においては、研究におけるベネフィット・シェアリングに関する基礎的文献からベネフィットシェアリングに関する根本をなす倫理的議論を概観する。

発表者2: 河合香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程)
タイトル: 遺伝的特徴における結婚差別とは何か

要旨:

遺伝的特徴に基づく差別とは、科学的に解析あるいは検査されたゲノムの状態をも含む、遺伝的特徴に基づくあらゆる区別、排除、制限、又は優先である(厚生労働科学特別研究, 2017)。その中でも結婚をめぐって生じうる差別とは何かについて、修士論文として調査する。差別の形成にあたって、遺伝カウンセリング等の専門知を提供する遺伝医療の専門家の規範や差別意識が当事者の意識に反映する場合も少なくないと予想する。専門家を対象に、差別に関する教育歴、自身が形成した規範と臨床実践、クライアントからの相談内容と対応の事例など、質問紙調査とインタビュー調査を行うことにより、遺伝的特徴に基づく差別に関する知の蓄積に貢献したい。

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報告書「共につくる臨床研究~患者と研究者の対話から~Ⅱ」ができました(武藤・藤澤・木矢)

2019/11/25

私たちはこれまで、日本網膜色素変性症協会(JRPS)からご縁を頂き、本邦で初めてiPS細胞の臨床応用に挑まれた髙橋政代先生(理化学研究所・2019年7月迄)との対話の機会に恵まれてきました。その内容は、2014年7月28日に「共につくる臨床研究~患者と研究者の対話から~」という報告書として取りまとめました。

本邦では、2014年に滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シート移植に関する臨床研究が実施され、その後も、複数の疾患に対する臨床研究が計画・実施されてきました。未知のリスクを伴う臨床研究であること、そして社会的な期待が過度に高まっていることなどを踏まえ、研究計画の立案段階から研究者と対象疾患の患者が対話をすることは必要であるとされています。再生医療分野では、臨床研究に関する啓発をしながら、研究計画や方向性への意見を陳情する取組みをJRPSが先駆けとなって実施してきましたが、こうした取組みは、今後、ますます重要なものになると考えられます。

このたび、網膜色素変性症(RP)に対する臨床研究の実施が近づいてきたことから、再びご縁を頂き、2018年11月18日に「JRPSワークショップ2018 in 神戸~網膜再生医療臨床試験・患者からのアプローチ~」をJRPSと共催させて頂くことになりました。今回も髙橋政代先生にご協力いただき、「臨床試験を成功させるために、患者は何ができるか、何をすべきかを考える」ことをテーマに、RP患者さんやご家族と一緒に考え議論しました。さらに、この企画は神戸会場と東京会場、札幌会場をオンラインでつなぐ3元中継の試みとして開催されました。本報告書は、この日の発言録をもとに、読者が追体験できるように再構成したものです。


この報告書冊子の入手をご希望の方は、 までお申し込みください。


報告書冊子のPDF版はここからダウンロードできます。

また、テキストデータもPDF版とword版の2種類をご用意しています。音声読み上げソフトの仕様等に合わせて、お好きなほうをダウンロードしてください。

テキストデータのPDF版はここからダウンロードできます。
テキストデータのword版はここからダウンロードできます。

※ この報告書作成にあたり、日本医療研究開発機構(AMED)「再生医療の実現化ハイウェイ」における、「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究」(課題D)より財政的支援を得ております。ここに御礼申し上げます。

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2019年第6回公共政策セミナー

2019/11/13

本日第6回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:11月13日10時~12時半頃

発表者1: 高嶋佳代(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)
タイトル: 患者対象のFIH試験における倫理的課題の検討

要旨:

治療法開発において初めて人を対象とするFirst in Human(FIH)試験では、安全性を確認することが主な目的となる。しかしながら、一般的な薬理試験でのFIH試験が健康な成人を対象とするのに対して、FIH試験の対象が患者である場合、リスクベネフィットのバランスを検討するのは容易ではない。その理由として、患者が対象となるFIH試験の場合、他に(標準)治療法がない場合があり、安全性のみならず、ある程度の治療的効果を期待することを一概に否定できないことが挙げられる。そこで本研究では、患者を対象として初めて試みる医療行為としてのFIH試験について理論研究を行い、その上でFIH試験に参加する患者自身の意識に着目して、患者自身によるリスクベネフィットの考え方や、FIH試験の意義などを考察したい。今回は、先月参加させて頂いたASBH(American Society for Bioethics and Humanities)で得た知識なども含めて研究の進捗に関する発表を行う。

発表者2: 飯田寛(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)
タイトル: 修士課程と博士課程の研究の状況

要旨:

修士課程で研究した「日本における生命保険と発症前遺伝学的検査をめぐる諸課題の検討」について、その後の学会誌への投稿状況等について報告する。博士課程においては労働分野におけるゲノム情報の取扱いに着目している。労働者の高齢化や少子化による労働者の減少の観点から事業者は労働者が健康で長く働くことを求めている。また、労働者もより長く働くことを望んでいる。この観点から労働者の職場の安全衛生や労働者の健康を管理する産業医の役割は今後益々重要である。一方で今般、ゲノム医療が本格的に開始されており、これにより自身のゲノム情報に接する労働者が今後増大することが予想される。事業者によるゲノム情報の利用は労働者に不利な帰結を生むとの懸念から、諸外国では法的な規制が設けられている(厚生労働科学特別研究2016)。また、事業者と雇用関係にある専属産業医の勧告権の行使には限界があるとの指摘もある(藤野2013)。そのようななか、2018年に労働安全衛生法が改正され、事業者による労働者の健康情報の取扱は、労働者の健康確保に必要な範囲に限られることがあらためて確認されるとともに、事業者には労働者の健康情報等の取扱規定整備を求めている。しかし、政省令においてゲノム情報への特別な言及はなく、産業医や健康保険組合がゲノム情報を取扱う可能性に関する議論が不十分である。そこで、博士課程の研究では特にゲノム情報の利用可能性がある治療と仕事の両立支援、健康増進、安全衛生という産業医と健康保険組合が関連する3つの領域で事業者の責務と労働者の不当な取扱いの間にどのような問題が起こっているのかの具体的な実態を把握し、労働分野を射程にしたゲノム情報の諸課題を整理する。

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「日本遺伝カウンセリング学会誌」にダウン症候群に関する論文が掲載されました(神原)

2019/11/11

学術支援専門職員の神原です。
このたび、日本遺伝カウンセリング学会誌に下記の論文が掲載されました。

神原容子、竹内千仙、川目裕、持丸由紀子、佐々木元子、三宅秀彦
「成人期ダウン症候群において必要とされる情報提供と家族支援のあり方」
日本遺伝カウンセリング学会誌、第40巻3号、101-108頁(2019年10月)

ダウン症候群のある方々の平均寿命の延長に伴い、ダウン症候群のある成人に対する健康管理と合併症治療の重要性は増しています。
成人期のダウン症候群のある方とその家族を対象に開催した「大人のダウン症セミナー」において、参加者を対象に質問紙調査を行い、情報提供と家族支援のあり方について検討を行いました。
その結果、ダウン症候群のある方の親は、成人後の認知機能と認知症、情緒と行動異常などに高い関心があることが明らかになりました。
このような、セミナーの取り組みは、家族が望むダウン症候群に関する情報提供の役割を果たし、今後の情報提供の場として有用であると考えられました。

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2019年第5回公共政策セミナー

2019/10/09

本日第5回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:10月9日11時~12時頃

発表者1: 北林アキ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程科)
タイトル: 患者・市民の視点を踏まえた医薬品情報の提供を実現するための課題の検討

要旨:

医薬品は、品目毎に厚生労働省の承認を受けて初めて製造販売、すなわち市場に出荷又は上市できるようになる。しかし、承認前に得られる副作用等の情報は一般的に限られることに加え、2017年の条件付早期承認制度の開始等によって、承認後の情報収集の重要性が、副作用の早期発見や適正使用のために一層増している。収集する情報源として、これまで主であった製薬企業や医療者からの情報に加え、患者から寄せられる情報の利点が注目され始め、副作用の早期発見や適正使用のために当該情報を規制当局の意思決定に活用する取組みが世界的にも進んできている。しかし、こうした取組みが始まったのは2000年代初頭と比較的最近のことであり、未だ各国でも模索が続き、課題を抱えている状況である。そこでリサーチクエスチョンとしては、患者の実体験の情報を基に承認後の医薬品評価を行うという世界的な動向が、市民と医薬品行政の関係にどのような変化を求め、またそれはどのように可能なのか、ということを考案した。本報告にて、現在構想中の研究計画を共有することで、今後の調査研究の計画立案のための糧としたい。

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非介入研究の中央倫理審査についてお聞かせください!ワークショップ開催のご案内(10/7)

2019/09/11

治験については臨床研究中核病院等を中心とする中央治験審査委員会にて、また、「臨床研究法」に基づく特定臨床研究では認定臨床研究審査委員会にて中央倫理審査を行うための基盤整備が進められてきました。しかし、観察研究等の介入を伴わない研究(以下、非介入研究)に関しては、倫理指針で一括審査を認めているものの、その基盤整備はされてきませんでした。

そのため、AMEDでは平成30年度より非介入研究の中央倫理審査に向けた基盤整備が進められ、私たちも、本年度、基盤整備に向けた取り組みを行うことになりました。

中央倫理審査の実践においては、倫理審査の委託又は受託に関する手続きの多くを事務局が担うことになるため、その基盤整備において事務局の方のご意見は極めて重要と考えています。そこで、倫理審査委員会事務局の皆様にお集まりいただき、非介入研究の中央倫理審査を関するご意見をお聞かせいただくためのワークショップを企画しました。

当日は、平成30年度に「多機関共同非介入研究における倫理審査集約化に関するガイドライン」(案)を作成した東北大学病院 臨床研究推進センターの先生に同ガイドラインの解説もしていただく予定です。ご多忙とは存じますが、是非ともご参加くださいますようお願い申し上げます。

対象: 倫理審査の委受託に関心のある倫理審査委員会事務局の方
(委受託経験の有無は問いません。未経験または経験の浅い事務局の方々も歓迎!)
日時: 2019年10月7日(月) 14:00~16:30(受付開始:13:30~)
会場: TKP品川カンファレンスセンター バンケットホール4J(品川駅から徒歩1分)
お申込み〆切: 2019年9月27日(金)

 

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アリス・ウェクスラー氏と若手研究者の交流研究会(9/26)

2019/09/11

アリス・ウェクスラー氏(遺伝病財団理事)と若手研究者との交流研究会を開催します

【概要】

米国遺伝病財団の理事でいらっしゃるアリス・ウェクスラーさんを日本にお招きし、交流研究会を開催いたします。アリスさんは、ハンチントン病(HD)の当事者家族であり、また、歴史家としてHDに関する著作を多く執筆されています。研究会では、米国におけるHDの「発見」を描いた著作The Woman Who Walked in to the Sea: Huntington's and the Making of a Genetic Disease(Yale University Press; 2008)を題材に、お話いただく予定です。また、後半では、難病や遺伝性疾患をフィールドに調査を行っている日本の若手研究者から話題提供を行います。
ディスカッションを通じて、日米の患者会活動や科学コミュニティとの関わりについて、意見交換ができれば幸いです。
なお、報告とディスカッションは英語で行われます。

(※注:患者さん、ご家族、一般の方々が対象の講演会は別日程(9/29(日))で開催されます。ご関心のある方は、こちらをご覧ください)


Young Scholars with Alice Wexler Event

日時: 2019年9月26日(木) 10時~13時頃
場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階 公共政策研究分野 セミナー室
(東京都港区白金台4-6-1)
[アクセス・キャンパスマップ]
プログラム
(話題提供者):
司会者:Kaori Muto 武藤 香織
    東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授
1)Alice Wexler
  米国遺伝病財団 理事
2)Saori Watanabe 渡部 沙織
  東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野
  日本学術振興会特別研究員PD
3)Izen Ri 李 怡然
  東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員
対象: 関心のある研究者の方々
参加方法: 以下の「申込みをする」ボタンより事前にご登録ください。
主催: 東京大学医科学研究所公共政策研究分野
お問い合わせ: 東京大学医科学研究所 公共政策研究分野
E-mail:

 

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2019年度第4回公共政策セミナー

2019/09/11

本日第4回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:9月11日13時半~16時頃

発表者1: 神原容子(東京大学医科学研究公共政策研究分野 学術支援専門職員)
タイトル: 成人期ダウン症候群において必要とされる情報提供と家族支援のあり方について

要旨:

ダウン症候群のある方々の平均寿命の延長に伴い、ダウン症候群のある成人に対する健康管理と合併症治療の重要性は増している。成人期のダウン症候群のある方とその家族を対象に開催した「大人のダウン症セミナー」の取り組みと、現在行っている研究内容について報告する。

発表者2: 永井亜貴子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任助教)
タイトル: がん遺伝子パネル検査に対する患者・市民の態度に関する研究

要旨:

がん組織の遺伝子を一括して網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査は、2018年4月より先進医療として実施され、有効性と安全性について検討が行われた。2019年6月からは、がん遺伝子パネル検査の2製品の保険適用が開始され、がんゲノム医療を実施する体制づくりが進められている。こうした状況の下、2018年に実施したがん遺伝子パネル検査に関するインターネット調査の回答者であるがん患者、がん患者の家族、市民を対象として、2019年8月に同検査に関するインターネット調査を行った。本報告では、がん遺伝子パネル検査を取り巻く状況が変化する中で、同検査に対する態度に変化があるかについて検討した結果を報告する。

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「薬理と治療」に臨床研究法に関する論文が掲載されました(船橋、井上)

2019/09/02

特任研究員の船橋です。
このたび、「薬理と治療」に臨床試験法に関する以下の論文が掲載されました。

船橋亜希子、井上悠輔
臨床研究の「記録」に関する新しいルール ―臨床研究法をいかに理解し、いかに守るべきか?―
薬理と治療47巻Suppl 1, 37 - 41 (2019)

データ不正事案を背景に成立した臨床研究法は、データの「保存」義務に違反した場合に、50万円以下の罰則を設けています。
そこで、本稿においては、診療・研究に関する記録の保存に関する規制について整理・検討を行いました。
本稿に取り組む中で、改めて、臨床研究法の定義の問題、そもそもの理解の難しさ、それに伴う遵守の難しさを痛感し、そこから、副題をつけました。


倫理指針による規制から、臨床研究法という法律による規制に移行したことは、どのような波及効果を有するでしょうか。
今後の動きにも、引き続き注視する必要があると考えています。

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講演会「医療・研究開発に意見を言える患者像を目指して~欧州の取組みに学ぶ~」(9/7)

2019/08/16

講演会「医療・研究開発に意見を言える患者像を目指して ~欧州の取組みに学ぶ~」を開催します

【概要】

近年、諸外国では、医療・研究開発における患者・市民参画の推進が進められており、日本でも注目が高まっていますが、患者が学ぶ機会を確保することが課題となっています。欧州では、「欧州患者アカデミー」(European Patients' Academy on Therapeutic Innovation(EUPATI))という、医薬品の研究開発に関する患者の知識向上を目的とした教育資材が開発され、多くの卒業生を輩出しています。日本でも、患者が知識や役割を学び、多様な経験を生かしつつ、活動できる環境を整えることが必要です。そこで、欧州での取組みを学ぶため、「欧州患者アカデミー」から専門家をお招きして、講演会を開催することとなりました。ぜひふるってご参加ください。

※チラシはこちら

日時: 2019年9月7日(土) 14時~16時(開場13時30分)
場所: 東京大学医科学研究所1号館講堂 (東京都港区白金台4-6-1)
[医科研アクセスマップ]
[医科研キャンパスマップ]
プログラム: 1)講演
  講師:マシュー・メイさん
  欧州患者フォーラム(European Patients' Forum)
  プログラム・コーディネーター
2)質疑応答
対象: 関心のある患者さん、ご家族、一般の方々
参加方法: 参加費無料。以下の「申込みをする」ボタンから事前の参加申込が必要
通訳: 遂次通訳のご用意があります
主催: 東京大学医科学研究所公共政策研究分野(AMED「再生医療の実現化ハイウェイ再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究(課題D)」)
共催: 患者・市民参画コンソーシアム
お問い合わせ: 東京大学医科学研究所 公共政策研究分野
E-mail:

 

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アリス・ウェクスラー氏(遺伝病財団理事)講演会(9/29)

2019/08/16

アリス・ウェクスラー氏(遺伝病財団理事)講演会を開催します

【概要】

アリス・ウェクスラーさんは、HD(ハンチントン病)の当事者家族として国際的に著名であり、歴史家としてHDやご自分のご家族に関する数々の著作を執筆されています。また、アリスさんのお父様が創設された、遺伝病財団(Hereditary Disease Foundation)は、1970年代から基礎研究者への投資を開始し、今日の米国の患者団体のモデルとなりました。このたび、アリスさんを日本にお招きすることになりました。難病の当事者が閉じこもらず、科学や社会と積極的に関わりながら生きること、歴史的にみたHDなどについて、お話をしていただきます。

※ HD(ハンチントン病)は、常染色体優性遺伝の神経変性疾患です。この疾患は、欧米の優生政策において重要な標的となった過去をもつ反面、ヒトゲノム解析研究が開始されたときにはHDの当事者が倫理的法的社会的課題を考えるグループのリーダーとなったり、幹細胞治療研究でもHDを対象とした取組みが早々に実施されるなど、難病の研究開発において様々な経験をしてきました。日本でも指定難病となっています。

日時: 2019年9月29日(日) 14時~16時(開場13時30分)
場所: 東京大学医科学研究所1号館講堂(東京都港区白金台4-6-1)
[医科研アクセスマップ]
[医科研キャンパスマップ]
対象: 関心のある患者さん、ご家族、一般の方々
参加方法: 参加費無料。以下の「申込みをする」ボタンから事前の参加申込が必要
通訳: 遂次通訳のご用意があります
主催: 東京大学医科学研究所公共政策研究分野(AMED「再生医療の実現化ハイウェイ再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究(課題D)」)
共催: 日本ハンチントン病ネットワーク
お問い合わせ: 東京大学医科学研究所 公共政策研究分野
E-mail:

 

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2019年度第3回公共政策セミナー

2019/07/10

本日、2019年度、第3回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:7月10日(水)13時半~15時頃

発表者: 李怡然(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 家族内における遺伝性がんの「リスク告知」に関する研究

要旨:

がんゲノム医療の推進に伴い、疾患の早期発見や予防、治療薬の選択のために、疾患の発病リスクを家族内で情報共有すること(「リスク告知」)が医療者から推奨されるようになっている。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)は、医学的にactionable(対処可能である)とされる代表的な遺伝性がんであり、診断を受けたもしくは疾患の疑いがある患者から血縁者に「リスク告知」を行うことがますます期待されると考えられる。では、患者はどの程度、家族と遺伝学的なリスクや遺伝学的検査に関する情報を共有しようとしているのか。また、伝えるかどうかの選択にはどのような背景や、課題があるのか。
本研究では、上記の問題意識を出発点に、HBOC患者と家族へのインタビュー調査を実施している。本報告では、現在取り組んでいる博士論文の全体の構想を示した上で、これまでに実施した調査の結果の中から、「リスク告知」に関する語りに着目して、報告を行う。

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2019年度第2回公共政策セミナー

2019/06/12

本日、2019年度、第2回目の公共政策セミナーが開かれました。

ゲストスピーカーの方にもお越しいただきました。

内容は以下の通りです。

◆日時:6月12日(水)13時半~16時頃

発表者1: 船橋亜希子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 最先端医療における刑事過失責任を考える

要旨:

2017年度より「がんゲノム医療」という最先端の医療におけるELSI研究に携わったことを契機に、最先端医療と刑法の接点の模索と検討を繰り返してきた。当該活動における自身の一つの到達点が、伝統的な論点への回帰と再検討の必要性であった。そこで、当該課題に関するこれまでの取り組みと、現在行っている研究内容について、刑事医療過誤に関する研究内容も振り返りながら、報告する。

発表者2: 中田はる佳(国立がん研究センター 社会と健康研究センター生命倫理・医事法研究部 研究員)
タイトル: 未承認薬へのアクセス方法に関する日米比較

要旨:

保険診療によるがん遺伝子パネル検査の導入や、人工知能技術による治療法選択の拡大により、患者が未承認薬の利用を検討する機会が増加することが見込まれる。未承認薬の利用方法として、日本では2016年から拡大治験と患者申出療養制度が導入されている。一方、米国では、従来からあったFDAのExpanded access programに加えて、いわゆるRight-to-try法が導入され、2018年5月末には連邦法が成立している。本報告では、日米の未承認薬利用制度を概観した上で、患者団体のウェブサイト調査の結果を紹介し、未承認薬利用に関する情報の普及について検討する。

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「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」について(武藤)

2019/06/06

厚生労働省より、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」について、各都道府県の関係主管部局宛に通知が発出されました(社援発0603第1号、社援保発0603第2号、障障発0603第1号、老振発0603第1号)。これは武藤が分担研究者として参加した、平成30年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業) 「医療現場における成年後見制度への理解及び病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究」班(研究代表者 山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座 山縣 然太朗教授)の研究班の成果の一部です。

様々な方々の調査協力を得て、成年後見人できること、身元保証人(ビジネス)に頼らなくてもできることを整理し、成年後見人制度をはじめとする諸制度との調整も経てまとめられたものです。このガイドラインのご紹介ご批判もかねた事例検討会など、ぜひ多職種での対話の機会を増やしてくださいませ! ぜひご覧下さい。

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【院生室より】第19回東京大学 生命科学シンポジウムに参加してきました。

2019/05/30

4月20日に平成最後の「第19回東京大学 生命科学シンポジウム」に参加し、ポスター発表の機会をいただきました。

武藤研からは、大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程1年の高嶋佳代さんが「幹細胞治療研究に関する報道とソーシャルメディアの影響に関する一考察」について発表されました。また、同じく同課程の楠瀬まゆみが「研究領域における情報銀行(情報利用信用銀行)システムの影響と便益・利益の検討」について発表しました。文系のポスターは、武藤研の2名だけだったようでアウェイ感もありましたが、休日にもかかわらず武藤研から北林さんが応援に来てくださり、大変心強かったです。

異なる領域の方々が多かったですが、足を止めてポスターを見てくださり、質問やコメントを沢山いただきました。今後の研究につながるような示唆もいただき、大変貴重な機会となりました!

(D1-楠瀬まゆみ)

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2020年度大学院進学について

2019/05/27

公共政策研究分野では、以下の2つの大学院における修士(博士前期)・博士のそれぞれについて入学・進学を受け入れています。

出願にご関心のある方は、事前にご連絡をお願いしております。研究計画書(書式自由)とともに 宛てにお送り下さい。

なお、出願にあたっては、大学院主催の説明会にもご参加下さい。

1.新領域創成科学研究科

メディカル情報生命専攻 医療イノベーションコース
担当教員:武藤、井上
https://www.cbms.k.u-tokyo.ac.jp/lab/muto.html(ラボ情報)
https://www.cbms.k.u-tokyo.ac.jp/admission/schedule.html(入試)

2019年6月1日(土)入試説明会(ラボ紹介 10:25-12:40 Meet the Professor 12:40-13:00)には、井上が参加します。オープンラボは開催しません。

2.情報学環・学際情報学府

文化・人間情報学コース
担当教員:武藤
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/faculty/muto_kaori(ラボ情報)
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/admissions(入試)

2019年6月8日(土)10:00-12:00 文化人間情報学コース入試説明会には、武藤が参加予定です。

2019年6月8日(土)13:30-16:30 2020年度東京大学大学院学際情報学府入試説明会でのブース展示は行いません。

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【院生室より】日本産業衛生学会に参加してきました

2019/05/26

名古屋国際会議場で開催された第92回日本産業衛生学会に参加してきました。

この学会は主に産業医で構成されるものであり、私は主に労働者の両立支援(労働者が病気にかかっても継続して働くことを支援すること)をトピックとした口演、シンポジウム等を聴講しました。労働者からの視点では労働者の生き方の尊重及び収入の確保、事業者の視点では労働者の高齢化対応及び労働力の確保の点から両立支援の取組みは重要だと考えられています。特に65歳までにがんにかかる労働者は男女とも15%であり、そのうち30%が退職している実態の改善が求められています。厚労省が推進している対策としては、がん検診の啓発、会社全体が正しく知る、がんになっても働き続ける環境をつくる、というものです。産業医は労働者の相談の窓口として役割が期待されていますが、メンタル不調に関する窓口として産業医は認知されているものの、両立支援としての認知はまだ低いことが実態のようです。また、産業医は主治医の意見を参考に両立支援を講じますが、主治医は就業よりも治療優先で、産業医の存在を知らず、双方向のコミュニケーションがまだ構築されていないことが実態のようです。その他、子育支援の出来ている企業は両立支援も進んでいるといったような発表や不妊治療と就業の両立の困難さに関する発表などもありました。当学会に参加したことで、両立支援の実態とその中での産業医の役割とその課題の概要を把握することができたと思います。

私としては産業医が参照する健康情報にゲノム情報が加わった場合に、労働者のプライバシーを保護して、産業医がゲノム情報をもとにどのように発症前の労働者に寄り添い、発症後の両立支援を準備するのか、発症後にどのように両立支援をするのかに関心があります。引き続き、当学会の情報を含めて研究を進めていきたいと考えています。

学会に参加させていただきありがとうございました。

(D1 飯田寛)

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2019年度第1回公共政策セミナー

2019/05/08

本日、2019年度第1回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2019年5月8日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 木矢 幸孝(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野特任研究員)
タイトル: 身体変化への抵抗の意味

要約:

神経疾患の多くは難治性で、いまだ治療法の確立には至っていない。本報告が取り上げる球脊髄性筋萎縮症(以下、SBMA)も、そのような疾患の一つである。SBMAとは筋力低下や筋萎縮を主症状とする疾患である。ただ、近年の研究成果によって、SBMAに関する疾患修飾療法が世界に先駆けて薬事承認され、ロボットスーツHALは医療機器として承認され普及されつつある。確かにこれらは根治治療ではないが、SBMA患者の多くはそれらを利用している。しかし、上記以外の薬を服用する患者や運動療法として推奨されていない「筋トレ」をする患者も存在する。なぜ彼らはそのような行為をするのか。このような背景・問題意識のもと、本報告はSBMA患者の語りを通して、身体変化への抵抗の意味を考察する。その結果、彼らの行為は決して非合理的なことではなく、むしろSBMA患者全体に通底する問題から引き起こされた行為であることを示す。

発表者2: 武藤 香織(東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授)
タイトル: 「身元保証」がない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン(案)について

概要:

近年、身寄りがなく、意思決定が困難な状態にある人の入転院や医療に関して、医療機関が各自の方法で身元保証を求める動きがある。このことは医師の応召義務違反への懸念、成年後見制度の濫用、家族機能の代行として身元保証を業とする団体の登場と規制の要否などの議論につながっている。2017~18年度にかけて、厚生労働省の研究班に参加し、医療機関への質問紙調査及びヒアリングを行った。その結果をもとに、今般、「身元保証」がない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン(案)が策定された。本報告では研究班の活動内容とガイドライン概要を報告する。

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