出生コホート研究の参加者調査の結果がHealth Expectations誌に掲載されました(李)

2017/09/22

D2の李怡然です。

Health Expectations誌に、下記の論文が掲載されました。

Izen Ri, Eiko Suda, Zentaro Yamagata, Hiroshi Nitta, and Kaori Muto. “Telling” and assent: Parents' attitudes towards children's participation in a birth cohort study. Health Expectations. 2017. DOI:10.1111/hex.12630

現在、世界各国で疫学の観察研究の一種である、出生コホート研究が実施されています。日本でも全国10万人の子どもを胎児期から13年にわたって追跡する「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」という大規模なプロジェクトが2011年から始まっています。
親が代諾して子どもが参加する、出生コホート研究を実施する上での課題として、研究者が成長後に子ども本人から「インフォームド・アセント(informed assent)」(=賛意)を得ること、そして「ディセント(dissent)」(=拒否)の意向を尊重することが重要だと、近年国際的に指摘されています。

ただし、インフォームド・アセントを得る以前に、研究参加に代諾した親から、子どもに研究参加について伝えるプロセス(“telling”「告知」)については、これまで着目されてきませんでした。そこで、「お母さんやお父さんは、いつ・誰と・どのようにお子さんにお話をするのだろうか?」という疑問から出発して、私たちはエコチル調査に子どもを参加させている、母親と父親に対面でのサーベイ調査およびインタビュー調査を実施しました。

結果として、子どもにとっての多様なベネフィットを見出し、研究参加を続けることを直接的・間接的に促す“directive telling”(「指示的告知」)をしたいと考える親が多くいることが分かりました。

もし仮に「指示的」な告知がなされやすいとすると、親が子どもに伝えるのをサポートするとともに、親自身も重要なポイントを確認できる素材を提供することが必要だと示唆されます。また、子どもの拒否の意向も含めて、意見を発信する機会を保障することも、研究者の責務と考えられます。もちろん、実際に親子の間でどんな会話がなされ、お子さんが成長過程の中で、どのような認識をもって育っていくのかは、これからフォローする中で明らかになることです。

最後になりますが、本研究に多くのご協力を賜りました、調査協力者の皆様と、エコチル調査、「エコチルやまなし」(甲信ユニットセンター)の皆様に深く御礼申し上げます。